グラフィックデザイナーの城崎哲郎、サリーン・チェン、松田洋和による三人展「J C M Jozaki Tetsuro+Chan Sarene+Matsuda Hirokazu」では、本屋青旗が取り扱う書籍から三人がそれぞれ選書した本およびコメントをご覧いただくことができます。この選書の中から一部、オリジナルのしおりに書かれたコメントとともに本をご紹介します。

Anti-Environments / Luis Adrian Borchardt (einBuch.haus, Scheidegger & Spiess, 2026)
ベルリンを拠点に活動するドイツ人デザイナーでアーティスト、ルイス・アドリアン・ボルヒャルト(Luis Adrian Borchardt)の作品集。本書に収録されたイメージは、従来のデザインソフトウェアは使用されず、すべて「Google スプレッドシート」のみを用いて作られています。本文は袋綴じ、紙を二つ折りにして四穴のファスナーでファイリングされており、読者はインターネット上からデータを印刷し自由に製本できる仕様に。
SCREENSHOTS FROM A SERIES OF VIDEOS ABOUT A RICE FIELD AND ITS SURROUNDINGS / Cintia Tortosa Santisteban
スペイン人写真家、シンティア・トゥルトーザ・サンティステバン (Cintia Tortosa Santisteban) の作品集。作者にとって、日本にある小さなアパートの5階バルコニーから撮影を行うことは、日課であり儀式のようなものでした。眼下には田園風景が広がり、農作業をする人々や子どもたち、通行人が、徒歩で、自転車で、あるいは車で行き交います。彼らの背景を知るよしもないのに、どこか見覚えがあるように感じられる人物たちです。作家は、同じように続くこの日常の光景に、些細な変化や、二度と繰り返されることのない固有の瞬間を見出します。1,000本を超える映像アーカイブから選出された約100点の図版で構成された一冊。
Vase Shapes (Goods, 2024)
Goodsがこれまでに各地で収集した花瓶について言及した一冊「Vase Shapes」。美術作家・佐貫絢郁がGoodsの花瓶をもとに描き下ろしたアートワークのほか、花瓶および花にまつわる断章が収録。当初の持ち主の手から一度離れたそれぞれ個性的な花瓶は、一点物、複製物、日曜大工、骨董、ワレモノ、そういった基本情報すら辿れない不可知なものばかり。この本は、そうした物たちを新しい目で見直し、輪郭線を引くという試み。商品に対しての描写、説明、現像を婉曲的に行いながら紹介する、いたって不親切なGoodsのカタログとしても。
U-JOINTS - A TAXONOMY OF CONNECTIONS (SYNC-SYNC EDITIONS, 2022)
デザインにおける継手(ジョイント)の分類を紹介する作品集。名作プロダクトの継手に関するリサーチから、建造物の結合部や服飾の縫製をはじめ、ボルト、シーリング、溶接、木組、ニット、ロープ、フェンス、交通網など、あらゆるジャンルに存在する「継手」を分類。4年にわたるリサーチと展覧会を経て、900ページ超に及ぶボリュームで包括的にまとめられた作品集です。研究者やデザイナー、建築家、アーティスト、写真家、イラストレーターなど120人以上の著者の声と視点をまとめ、豊富な図版とエッセイ、インタビュー、工場見学、ルポルタージュ、そして膨大な種類の継手の分類という形で、デザインと建築にアプローチした一冊。
Amid / David Thomas (Perimeter Editions, 2026)
オーストラリアを拠点に活動するアーティスト、デヴィッド・トーマス(David Thomas)の作品集。作者は、40年にわたるキャリアのなかで、色彩理論、モノクローム絵画、インスタレーション、そしてフォト・ペインティングに、きわめて人間味あふれる詩的なジェスチャーを刻み込む視覚言語を構築してきました。本書では、絵画、テキスト、そして写真を融合させ、一冊の本という形で表現しています。

No thanks, I’m just looking / Lisa Sudhibhasilp
アムステルダムを拠点に活動するフランス人アーティスト、リサ・スディバシルプ(Lisa Sudhibhasilp)の作品集。作者によって行われたホームセンターでの展覧会を記録したもの。店舗にある商品や什器で即興的な彫刻作品を作りながら、既存のディスプレイの構造に介入し、展覧会という空間に置かれた芸術作品のように実用的な品物を鑑賞する場としてホームセンターを提案しています。

Science of the Secondary: Boxed Set 1 (vol.1-10) (Atelier HOKO, 2019)
シンガポールを拠点に活動するアトリエ・ホコ(Atelier HOKO)が手がける『Science of the Secondary』シリーズは、りんごやコップ、時計といった、私たちの日常生活に存在するごく身近な事物や現象に焦点を当て、人間とそれらとの関係性を細やかに観察し、探求するプロジェクトです。誰もが知っているはずの事象をテーマに、ユニークな視点とリサーチで、私たちが無意識に見過ごしている日常の豊かさや、物と人との間の繊細な関係性を静かに浮き彫りにします。日本語訳冊子付。

TTP / Hayahisa Tomiyasu (Mack, 2018)
日本人写真家、富安隼久(Hayahisa Tomiyasu)の作品集。ドイツ・ライプツィヒで、当時作者が住んでいた学生寮の部屋の窓から見渡せる公園に置かれた卓球台に焦点を当て、定点観測的に撮影しています。時間や季節の移り変わりとともに、人間の行動から滲む習性やユーモアを、静かにそこにあり続ける卓球台のもとで垣間見ることができる一冊。イギリスの出版社Mackが主催する「First Book Award」の2018年グランプリ受賞に伴い刊行。第44回(2018年度)木村伊兵衛賞ノミネート作。
Book of Plants (Second Edition) / Anne Geene
オランダ人アーティスト アンネ・ジーネ(Anne Geene)の作品集。路上の枯葉や落ち葉、住宅や公共の植栽、コンクリートの隙間に根を張る草花、葉の虫食い、季節ごとに色を変える葉の記録など、さまざまな見た目や季節ごとに変容する植物の標本を探求。平凡な植物の膨大なイメージの記録、収集、整理、編集は、あらゆる姿の植物に対する賛辞であり、日常にありふれた植物の驚くべき美しさが描かれています。

マイハズバンド / 潮田登久子 [SIGNED] (torch press, 2022)
写真家・潮田登久子が、夫の島尾伸三と産まれて間もない娘のまほとの3人で過ごした、1978年からの約5年間を記録した作品集。洋館の一室という狭い生活空間で撮影された家族3人でのにぎやかな日々と、静寂が訪れる夜の部屋でひとり孤独と向き合った作者の写真。寝具の上で立ち上がる娘や、積み上げられた本、冷蔵庫に貼られたひらがな表など、時間とともに表情を変える家族の輪郭を、生々しくも淡々と、関係性と相反するような眼差しを見ることができます。